腸活」という言葉は、ここ数年で一気に広まりました。
でも、そもそも なぜそこまで腸が大事だと言われるのか?
「なんとなく健康に良さそう」というイメージはあっても、
ちゃんと説明できる人は意外と少ないかもしれません。
この記事では、少し視点を変えて
「生き物の進化」と「私たちのからだの成り立ち」
から、腸の大切さを考えてみたいと思います。
「最初にできた器官」はどこか?
突然ですが、質問です。
私たち動物が誕生するまでに、
いちばん最初にできた“器官”はどこだと思いますか?
脳でしょうか?
心臓でしょうか?
実は、とても大ざっぱにいうと
「食べ物を取り込み、消化・吸収するための“腸の原型”」
が、かなり早い段階から存在していました。
私たち人間が生まれるずっと前、
もっとシンプルな多細胞生物たちがいた時代をイメージしてみてください。
彼らにとってまず必要だったのは、
- 外から栄養を取り込む「入口」
- 取り込んだものを分解・吸収する「袋」や「管」
つまり、現在の腸につながるような“消化管のもと”でした。
もちろん、実際の進化のプロセスはもっと複雑ですが、
「食べて、栄養を吸収する仕組み」 は
生き物が大きく、複雑になっていくための土台になったと考えられます。
「第二の脳」じゃなくて「もう一つの脳」
腸はよく
「脳の次に神経細胞が集まっているから、第二の脳と呼ばれる」
と紹介されます。
実際、腸には**独自の神経ネットワーク(腸管神経系)**があり、
自律的に動いたり、脳と情報をやりとりしたりしています。
これを踏まえると、
「腸は脳の“下位”ではなく、
もう一つの“考える場”を持っている」
と言ってもいいかもしれません。
進化の歴史に目を向けると、
神経系は「体の表面」や「腸管」の周りに広がる形で発達していったと考えられています。
つまり、古い生き物たちは
腸で栄養を吸収しながら、
その周りの神経ネットワークで「反応し、判断していた」
とイメージすることもできます。
そう考えると、
腸は「第二の脳」というより、
「最初期から存在していた“もう一つの脳”」
という見方もできそうです。
なぜ現代の私たちにとっても腸が大事なのか
「ふーん、昔の生き物の話は分かったけど、
今の自分にどう関係あるの?」
と思うかもしれません。
ここからが腸の面白いところで、
進化の歴史で重要だったこの器官は、今の私たちの健康にも深く関わっています。
たとえば、腸は…
- 毎日食べたものを消化・吸収する場所
- 体の免疫細胞の大きな割合が集まっている免疫の要所
- 腸内細菌がビタミンや短鎖脂肪酸などの物質を作り出す発酵工場
- 脳と双方向に情報をやりとりする**「腸―脳」のハブ**
になっています。
つまり腸は、
- エネルギーの入り口であり
- 免疫の司令室の一つであり
- ホルモンや神経を通して脳ともつながっている
という、かなり“重要ポジション”の器官なんです。
「腸を大切にする」という視点
ここまでの話をまとめると、腸は
- 生き物の進化の中で、早い段階から重要だった「食と生命の入り口」
- 独自の神経ネットワークを持つ「もう一つの脳的な器官」
- 現代人の健康(免疫・代謝・メンタル)にも深く関わる拠点
だと言えます。
「腸にいい食事を」とか
「腸活が大事」とよく言われますが、
それは単に「お通じが良くなるから」というだけでなく、
からだ全体と、長い進化の歴史の両方を考えたときに、
腸が“かなり特別な器官”だから
とも言えます。
おわりに:次は「腸内細菌」の話へ
今回は少し引いた視点から、
「なぜ腸という器官そのものが大切なのか」
という話をしてきました。
- 生き物の進化の中で、早い段階から重要だった「食と生命の入り口」であること
- 独自の神経ネットワークを持ち、「もう一つの脳」とも言える存在であること
- 消化・免疫・ホルモン・神経など、全身とつながる“ハブ”の役割をしていること
こうした背景を知ると、
「腸を整える」という言葉の重みも、少し違って見えてくると思います。
そして、現代の私たちにとって腸を語るうえで欠かせないのが、
腸の中に住んでいる「腸内細菌」たちです。
同じ「腸」という器官の中でも、
- どんな細菌が
- どれくらいのバランスで住んでいるか
によって、私たちの体質や健康状態が変わってくる可能性が、
多くの研究から示されています。
次回は、今回の「腸」という“器官の話”から一歩踏み込んで、
腸の中に住む住人たち――腸内細菌とはそもそも何者なのか?
というテーマで書いていきます。
- 腸内細菌にはどんなタイプがいるのか
- 「善玉菌・悪玉菌」という分け方の限界
- 研究の現場でどんなふうに腸内細菌が調べられているのか
といったところを、できるだけ分かりやすく整理する予定です。
「腸が大事」という全体像を頭の片隅に置きつつ、
次回はその中で暮らす“住人たち”の世界を一緒に覗いてみましょう。
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